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水道民営化の光と影 ─ 水の未来を考える


2018年12月に改正水道法が成立しました。この法律は、自治体が運営してきた水道事業に民間企業を参入させることを可能にするものです。しかし、「水道民営化」の動きに対して、多くの懸念の声が上がっています。

 果たして、私たちの生活を支える水の未来はどこへ向かうのでしょうか。


世界の水道ビジネスが支配する市場

現在、世界の水道ビジネス市場は、フランスの「ヴェオリア」や「スエズ」、イギリスの「テムズウォーター」といった巨大企業によって支配されています。これら3社は、世界の上下水道民営化市場の7~8割を占めるとされており、水道事業の売上高も桁違いです。


ヴェオリア: 約1兆6000億円

スエズ: 約1兆5000億円

テムズウォーター: 約6000億円


一方、日本の水道関連企業の売上規模は最大で約1000億円程度。こうしたグローバル企業が日本市場に参入する場合、コスト効率重視の運営により水道事業の公共性が損なわれる可能性があります。




水質の低下リスク

水道民営化の影響で特に懸念されるのが水質です。外資系企業が採用する効率重視の水処理方法では、ポリ塩化アルミニウム(PAC)や硫酸アルミニウム(硫酸バンド)などの化学物質が凝集工程で使用されることがあります。この方法では、水道水に酸化アルミニウムが溶け込む可能性が高まり、健康被害のリスクが指摘されています。



メンテナンスの課題

水道民営化に伴い、インフラの維持管理も民間企業の責任となります。民営化の目的の一つは、コスト削減と効率化です。しかし、これが「メンテナンスの質の低下」や「長期的なインフラ投資の欠如」を招くリスクが指摘されています。



コスト削減の影響


民間企業は利益を追求するため、メンテナンス費用を削減する傾向があります。これにより、水道管の老朽化が進行し、水漏れや設備トラブルが多発する可能性があります。実際、フランスのパリでは民営化後にメンテナンス費用が削られ、水道管の老朽化や水質低下が深刻な問題となりました。



長期的視点の欠如


民間企業の契約期間は限定的であることが多く、短期的な収益を重視する傾向があります。その結果、老朽化した水道管の更新が後回しにされるケースも少なくありません。日本では、設置から40年以上経過した水道管が全体の約15%に達しており、適切な更新が行われない場合、インフラ崩壊のリスクが高まります。



透明性の欠如 


民営化に伴い、メンテナンスの状況や水質情報が公開されないケースも懸念されています。これにより、住民が水の安全性に不信感を抱く可能性があります。




国内の現状と世界の失敗事例

国内では宮城県や浜松市で民営化が進んでいます。特に宮城県では2021年に「みずむすびマネジメントみやぎ」との契約が結ばれましたが、料金の値上げやメンテナンス不足、水質低下への懸念が広がっています。


一方、世界では水道民営化が失敗に終わった事例がいくつかあります。


フランス・パリ

メンテナンス費用削減の影響で水道管の老朽化が進行し、水質悪化や漏水事故が多発。結果として再公営化が実施されました。


イギリス・ロンドン

インフラ投資不足によりサービスの質が低下し、住民の信頼を失いました。


これらの事例は、民営化が必ずしも効率化やサービス向上に結びつかないことを示しています。




水道民営化で問われる公共性

水道は電気やガスと異なり、個人が選べるものではありません。その選択は自治体に委ねられています。民営化を進める際には、住民の声を反映し、透明性を確保した運営が不可欠です。




私たちができること

水道事業の民営化には、財政負担軽減や効率化の期待がある一方で、料金の高騰、水質低下、メンテナンスの課題など多くのリスクがあります。これらの問題を解決するために、世界の事例から学びつつ慎重な議論が必要だと思います。


水は命を支える基盤であり、公共性を守るべき資産です。私たち一人ひとりがこの問題に関心を持ち、未来の水道インフラを守るために声を上げていく必要があるのではないでしょうか。





 

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